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kakinokizaka

「都立大学駅」
魅力的なのは、
「柿の木坂」
あるから。

名は体を表す。だとしたら「柿の木坂」が表しているのは?
坂の途中に柿の木がある家が建っていた。そこから名前が付いたというのは、想像力が乏しい。実はこんな話がある。柿の木坂は、元来は環状七号線から都立大学駅付近までを下る坂。その坂は人家が少なく、夕暮れ時はとても寂しかったという。逢魔が時のこの坂を、怖いものだから人は駆け抜けた。すなわち元々の名は「駆け抜け坂」。それが転じて「柿の木坂」になった。柿の木坂の名前の由来はいくつかあり、この話はそのうちのひとつ。

昔の人たちが駆け抜けたかもしれない街を、ゆっくり歩く。寂しかったといわれる風景には、いまでは洒落た店が点在していて、よく見るとその洒落かたがどこか柿の木坂っぽい。キラキラテカテカしておらず、ラスティック=「飾り気のない」「素朴」な雰囲気。時間の堆積が独特な味わいを生み、この街らしさをつくっている。

柿の木坂の辺りを歩いていると、タイムスリップしたのではと思うような場所に出会うことがある。懐かしいけど、そこにリアリティはなく、昔のテレビドラマで見たような風景。昭和のいい時代の、品のある邸宅街がそのまま残っている感じ。スクラップアンドビルドが激しい都内にあって、このゆったりとした感覚は価値あるもの。緑もマイペースに、いきいきと茂っている。
“SLOW”は、ここ柿の木坂を表すキーワードなのかもしれない。

坂があることで、街の表情は豊かになる。どこまでも平坦につづく道は退屈だけど、緩やかな起伏は風景のアクセントになる。そんなことを考えながら歩いていると、駒沢オリンピック公園へと辿り着いた。多くの人が自然のなかでスポーツに打ち込んでいる。この風景もずっと昔から見ているような。

時代に流されることなく、悠々と、自分らしく在りつづける。
柿の木坂の矜持を知った気がした。

SUMAU「私の好きな街-都立大学」

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