約10万坪の敷地に、7学部3研究科が集まる慶應義塾大学日吉キャンパスがある。たくさんの学生で活気づく日吉は、早稲田と並ぶ一大学生街。街の中心にある「日吉」駅には東急の東横線と目黒線、新横浜線、そして横浜市営地下鉄のグリーンラインがアクセスしている。駅前で、まず目につくのが「ぎんだま」と呼ばれているモニュメント。待ち合わせの目印となっていて、正式な名称は「虚球自像(こきゅうじぞう)という。その銘板には “この球に体の一部分、手、足、目、耳、鼻を入れることによって、五感を確かにする時、球からイメージを受けます。すると、もう一つ向こう側の自分を、みることになります” といったことが書かれている。難解、あるいは哲学的。そんな言葉からはじまる街が、ここ日吉。
「日吉」駅の東側には約100本もの銀杏が植えられた並木道があり、日吉キャンパスのシンボルとなっている。日吉に大学が開校されたのは1934年。長い歴史を歩みながら慶應義塾大学は日吉という街と一体化してきた。いまでは日吉にとってはなくてはならない存在となり、この街で暮らす人々も学生たちを温かく見守っている。
駅の東側には学生たちが学ぶ大学がある、駅の西側にはおふくろのような存在の飲食店が並んでいる。「普通部通り」「日吉中央通り」「サンロード」「浜銀通り」「日吉商店街」の5つの商店街がある西側。安価でお腹いっぱい食べられる食堂が多くあるこの商店街一帯を、学生たちは親しみを込めて「ひようら」と呼んでいる。駅の東側がオモテで、西側がウラ。学生たちは講義が終わると、ウラへ繰り出し、食べて、飲む。空腹を愛情たっぷりの味でいっぱいにしてくれる、おふくろのような思いやりに満ちているのが、ここ「ひようら」。
日吉という地名は日吉本町の金蔵寺にあった日吉権現にちなんでつけられたという。金蔵寺の本堂には桜の並木道を山門に見立てた桜大門があり、春には多くの人でにぎわう。他にも150年を超える民家がある日吉の森庭園美術館や丘の上に緑があふれる日吉の丘公園などがある。駅の近くは学生たちでにぎわっているが、周囲には心休まる場所がいくつもある。その穏やかな環境も日吉の魅力。
駅から少し離れると、そこに広がっているのは静かな住宅街。大学のキャンパスを静かに見守るようにしてある、日吉という街にやさしさを感じた。